丈夫な鍋は? 鍋の比較と正しい選び方
■鋳物ホーロー鍋 VS 南部鉄器の鍋
ずっしりと重い鋳物ホーロー鍋は、調理器としての機能性とテーブルウエアとしてのデザイン性を兼ね備えたスグレモノとして人気があります。しかし、頑丈な分厚い鉄鍋でありながら、ホーロー引きはとてもデリケートな加工です。高級な鋳物ホーロー鍋は、表面を下処理した鋳物鍋に琺瑯釉薬を塗布しては乾燥させ焼成する工程を3回以上繰り返し、表面が非常に硬く滑らかで、耐熱性・耐食性にも優れたホーロー引きに仕上げられています。それでも、ホーローは急激な温度変化に弱く、細かなひび割れを生じやすいものです。また、硬いガラス質でありながら、金属タワシや研磨剤を原料としたメラミンタワシを使うと簡単に傷付きます。丈夫そうに見えても、取り扱いに気をつけて丁寧に扱わなければならないデリケートな鍋です。
一方、南部鉄器の鍋は、400年の伝統の技から生み出される丈夫な鋳物鍋です。ただ丈夫なだけの無骨な鋳物ではなく、繊細な美しい鋳肌(いはだ)に特徴があります。また、南部鉄器といえば伝統の黒肌が常識でしたが、現在では鮮やかにカラーリングされて、デザインもコンテンポラリーな洋風の製品が開発され、海外でのファンも増えているようです。そのように耐熱塗装の焼付けが施されていても、内面は無垢の鋳鉄がむき出しになっていますので、料理に鉄分が溶け出すという健康へのメリットは変わりません。
ステンレス鋼は鉄を主成分としながら耐食性に優れた合金であり、一般の鋼鉄よりも強度が高いため、丈夫で錆びにくいという特性があります。しかし、熱伝導性で劣るため、ステンレス鍋には加熱むらがあり、焦げ付きやすいことが弱点でした。そこで開発されたのが、ステンレス多層鍋です。この鍋は、熱伝導性に優れたアルミニウム素材をステンレス鋼で挟んだ構造をしており、それによって熱伝導性にも優れた鍋に仕上がっています。底面だけを多層構造にしたものもありますが、側面も含めて全体を多層構造にしたステンレス全面多層鍋は、保温性にも優れ、余熱調理も可能です。また、アルミが中心素材として使われているため、鋳物の鉄鍋ほど重くないというメリットもあります。